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ARTICLE by Gen Umezu about Machida's art & muisic:
BT Jun. 2002


町田良夫-ハイパーナチュラルな「光」と「音」の「響き」

町田良夫は、CDボックスセット《Hypernatural》(1999)、FDシングル《Amorphous》(1999)、CD《Hypernatural #2》(2001/softel music)のリリースによって、近年にわかに注目を集めつつある音楽家である。しかし、筆者のように1980年代後半から町田の活動に興味を寄せていた人間にとって、町田はそもそもビデオ作品やコラージュ作品を手がける美術家として認識されていた。そうした幅を持つ町田の活動全般を視野におさめると、音楽作品の深化と美術作品の深化がどこかで通底しているように感じられる。
まずコラージュ作品とCD作品について。町田のコラージュ作品は、各地で採集された砂、土、羽根、虫など、様々な土地と時間の記憶を伴った材料を用いた独特のテクスチュアに特徴があるもので、時には感光された印画紙も用いられた。一方、CDに収録された楽曲は、エレクトロニクスやコンピュータによる音響処理もなされているが、基本的には、土地の記憶を喚起するフィールド・レコーディングや複雑な倍音を含んだ民族楽器の演奏などによるアナログな音のテクスチュアに特徴がある。前述したコラージュ作品をふまえると、CDに収録された楽曲は、音を媒体としたコラージュ作品としてとらえることもできる。
つぎに、印画紙作品と自作楽器について。町田はコラージュ作品の材料だった印画紙を単独で用い、現像の行程のみで作られる一連の印画紙作品「フォトバティック(Photobatik)」へと移行した。一見するとフォトグラムのようだが、町田によれば、フォトグラムは「部分露光と全現像」、「フォトバティック」は「全露光と部分現像」という違いがあるという。この移行について、町田はコラージュに用いる素材からは過去の時間しか喚起されない点に疑問を感じ、未来という時間を呼び込むために光が欲しかったと述べている。一方、録音作品であるCDに飽きたらず、ライブ演奏への欲求が高まったことから、町田はオリジナルな音階を持つスティールパンを制作し、「アモルフォン(Amorphone)」と命名したこの自作楽器とMax/MSPを組み合わせて演奏するライブ活動を開始した。ここで、「フォトバティック」における印画紙の微妙な階調と、複雑な倍音を含んで反響しながら生成する「アモルフォン」の音響をパラレルにとらえることもできる。
このように町田における美術作品と音楽作品の深化をパラレルにとらえてみると、つぎのようにいえるだろうか。すなわち、「もの」のサンプリングとミキシングがコラージュ作品を、「音」のサンプリングとミキシングがCD作品を、それぞれ規定していたとすれば、印画紙作品「フォトバティック」は「ものの記憶」から「光の響き」へと移行であり、自作楽器「アモルフォン」によるライブ音楽は「音の記憶」から「音の響き」への移行である、と。そしてこの移行は、町田という芸術家のハイパーナチュラルな「精神の響き」が、かつての場所や時間の記憶から解き放たれ、より抽象的な時間と空間において発生する「光の響き」と「音の響き」へと変容しつつあることを告げているのだろう。
梅津 元(うめづ・げん/芸術学)



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