
レクチャー「at SONAR in Tokyo」: @ Roppongi Hills Information Center / THINK ZONE 13th Oct. 2002
みなさんこんにちわ、町田良夫です。
今日は、今聞いていただいた、僕のライブでのサウンドシステムについて少し説明しようと思います。
まず、今日僕がメインで叩いていた楽器ですが、スチールパンの形をしています。これは自分で作ったスチールパンで、『Amorphone /アモルフォン』と呼んでいます。
このネーミングは「Amorphous/非結晶」というところからとっています。
「非結晶」である組織ですとか、「曖昧」であるとか「不完全な要素」というような領域のところに音楽的なターゲットを持ってきているからです。
今日は、アモルフォンを作った時の写真があるので、お見せしようと思います。
スチールパンは、普通のドラム缶からたたきだして作って行くわけですが、僕も同じように普通の企画サイズのドラム缶から作っていきました。
ドラム缶の底の部分、一番平らな部分、そこをハンマーで叩いて深さが大体20〜21cm位まで叩きだしてつぶしていって、ちょうど中華鍋の底の部分の丸い状態になるまで叩いていきます。
その次に、音を鳴らす部分をマーキングしていきます。この時に、今のスチールパンというのは、どこにどの音を配列するかが大体決められていますが、僕の場合、オリジナルな状態でマーキングしていきました。
その次に、音の鳴る部分は、こういうふ風にブロックされた部分なんですけれども、それ以外のところを更に叩いて凹ませて、相対的に音が鳴る部分を少しだけ、厚さが5mm〜1cm位の山にそれぞれしていきます。この時点から、大体各ブロックに音程あるいは音色みたいなのが出来てきます。
次にドラム缶の側面の部分をカットします。これはノーマルなスチールパンですと色々ソプラノですとか、テナーですとか、ギターパンですとか、ベースパン・・・というようなオーケストラ編成の様に、各音程の高いところから低いところまでをカバーできるように、それぞれにスチールパンがあるわけですが、僕の場合は、一般的なテナーパンという普通のミドルの音域を出すサイズの側面の長さでカットしました。
その後、全体に焼きをいれます。当然ドラム缶なのでやっていく過程の中ですぐサビてしまうので、そこで一度サビを落とします。この前後でチューニングの作業とそれから、音色を決定する作業をしていきます。どういう風にやっていくかというと、これはパンを裏から見た図になっていますが、裏から叩いたり、表から叩いたりして、音の鳴る部分を他の部分よりも少しずつ叩いて調整し、音の高さであるとか音色、音質をその時点で少しずつ決定していきます。
大体決定したところで、クロームメッキをかけます。クロームメッキをかけますと、今あるきれいな光っている状態になります。これは見た目の問題もありますが、サビを防ぐためにこうしているわけです。
クロームメッキをかける工場に出すと、やはりチューニングが少し変化してしまいますので最終的に、またチューニングをします。
これで大体、自分の思う様なモノが出来てくるというそういうプロセスです。
僕の『Amorphone/アモルフォン』の特徴なんですが、2つあります。
先ほど言ったように、この音列の配置の仕方が先ずノーマルなスチールパンとは大きくことなります。音階は、皆さんに聴いていただいたように、いわゆる"平均律"を使っていません。また、"純正律"ですとか、そういう一般的な"律"は使っていなくて、自分で決めた音律をブロックの中に配置しています。
もう1つの特徴は、音色なんですけれども、スチールパンは1930年〜1940年代に出来たとされているんですが、その時点では、かなり粗暴な作りで金属を棒で叩いているような「カーン、カーン」という缶カラのような音がしてたわけですが、現代のスチールパンは楽器としてかなり洗練されたモノとなっておりまして、すごく澄んだ倍音を整えた状態になった音色になっているわけです。
僕のアモルフォンは音質的にはちょうど中間にあってあるところを叩くと初期のスチールパンの様な音がしますし、あると部分を叩くと現代的なノーマルスチールパンの音が出るというようなそういう中間地点にあるような音が配列されています。
このアモルフォンを音が出きて演奏できるまで、一から作っていったわけですが、その制作プロセスのなかで学んだことが幾つかありました。これは自分がアコースティク楽器を作らなかったら、決して体感できなかったことで、なかでも一つおもしろかったのが「ノイズが楽器の音を育む」ということです。これはどういうことかというと、アコースティックな楽器を作っている過程でかなりノイズが発生して、そのノイズと共に徐々にその楽器個有の音色が整えられていくという事実です。
特にスチールパンの場合、金属を鉄のハンマーで叩いているのでかなり大きな音がします。通常ですと耳をやられてしまいので、イヤーパット、耳栓をして大きなハンマーで叩いていかなければ出て来ない、音色、そういう経過を得ないと得られない音色、という事を自ら体で学ぶことが出来たのはすごく良かったことだと思います。
あともう一つ、僕はアモルフォンを叩きながらMAX/MSPを使って同時に音を出してるわけです。
僕のMAX/MSPのパッチ自体の特徴なんですけれども、それ程、複雑なことはしていません。アモルフォンの音をマイクで拾い、それをなかのパッチがリアルタイムサンプリング、同時に4つのサンプリング・エンジンが鳴ってるんですが、そのエンジンがそれぞれ別々のタイミングだったり、別々の音程に変えて吐き出していくというようなものです。音色的なポイント、特徴はあります。
それは、VSTプラグインとしてディレイを使っていることです。
ディレイを、いわゆる一般的な300msですとか500msといった、いわゆるエコーの持つ「ターン・ターン」という効果として使っているのではなくて、音色を変化さえる用途で使っています。
どういうことかと言いますと、ディレイタイムを10ms前後に設定して、あとフィードバックパーセンテージを98%位まで持ち上げることによって、アモルフォンが持っているアタック感が強くてサスティーンがないエンベロープを、アタック感のない、それでいてサスティーンの伸びるような音色
、ストリングス系の音に変化させることが出来るわけです。
これが僕のMAX/MSPのパッチから出る音の特色になっています。
僕がなぜこのアモルフォンとMAX/MSPをライブ演奏で使っているか、という事なんですが、この2つに共通していえる事というのが、両方とも1から作っていけるという点です。
両方とも1から音が作っていけるので、そこに自分の思うようなシステムを組むことが出来るということです。つまり、ネーミングのところでお話したのですが、「非結晶」であるとか「曖昧さ」あるいは「不完全な要素」、そういうようなシステムをここで作ることができるわけです。
不完全なシステムというのは、それ自体が固まっていないので、その中に可能性とゆうか、どういう方向にもいける可能性みたいなものが含まれていて、つまり、その不完全なシステムの中に「未来の空間」が含まれているわけです。
一方、ライブ演奏というのはまさに、この場で音を作っていって、生み出しているという作業であってこれ自体は「現在という空間」と関係しているものだと思います。
僕の場合、ライブ演奏の「現在」という空間の幅をもう少し拡張したいという欲求がありまして、それを「不完全なシステム」「曖昧なシステム」というものを用いて「現在の空間」と「未来の空間」というような空間の幅を広げたいということで、演奏しているわけです。
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