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インタビュー「町田良夫の音楽について」 :
musee vol.33 Sep. 2001


HYPERNATURAL
記憶と忘却の共鳴、解放される不可視なもの

町田良夫 インタビュー INTERVIEW&WORDS/編集部

ここ最近では、マルチな才能を持ち合わせるということにさほどの驚きもなくなってきたが、 音楽家でもあり美術家でもあり・・・という町田良夫は、「自分がイケると思ったものであれば、 基本的にはなんでもやっていきたい。精一杯やったなかで結果的に枠ができるということが望ましい」 というスタンスで活動を続けているマルチなクリエイターだ。「上手い人はドラマを創っているけど、 僕はそういうものが出来ない。最初から最後まで変わらないんだけど、―― 夏に、水の中に手を入れ たら気持ちいいだとか―― 肌触りを楽しむ感覚表現だと思うんです。音も絵もどちらかというと 直球勝負かもしれませんね」といって笑うが、その表現には、技術的な観点を寄せつけない、 潜在的な領域に直接響いてくるもの、が存在するようにも思える。

彼は、94年前後に、ヴィデオを使ったインスタレーションをしばらくやっていたが、 「機械をオペレーションする作業があまりに多い。作るまでの”段取り”みたいなものが多すぎて、 そのうちに最初に持っていた興味だとか気持ちというものが、段取りの”こなし”になってしまう。 それがイヤになってとりあえず止めたんです」といい、現在の製作では、問題の”こなし”のない 方法をとっている。音楽製作において、二作をリリースした『hypernatural』のシリーズでは、 フィールド・レコーディングを中心にし、音の加工/エフェクト処理もほとんど行われていない。 「これまで僕がやっているものはトラック数も少ないし、それこそモノラルなものもある(笑)。 4トラック以上なんてないしシーケンサーで細かく組み立てたり、切ったり貼ったりという作業も ない。録ってそのまま使ったり。むしろ音を出来るだけ少なくしていって、どう組み立てるかという 作業なので、基本的には、収録時にどういう音がどれだけ録れているか、ということに依存している ものだと思うんです。録った音をスピーカーを通して聴いてみて、『あっ、いいな!』と思ったら すぐにトラックに落としていって終わらせてしまう。あと、スピードは変えますが、音の加工も あまりしないんです。ノーマルで聴くとアフリカのブッシュの音でも、半分ぐらいまで落とすと 虫とかカエルの鳴き声が引き伸ばされて独特なビートが現れてくるんです。 なぜフィールド・レコーディングが良いかというと、寄り道ができる。あるところに行くまでに、 途中でいろいろなものに出会って、別の体験が音と一緒にくっついてくるんです」
そういう彼は、さまざまな場でフィールド・レコーディングを行っている。というのも現在、 ジョイセフ(JOICEP)というNGOの日本での国際協力の財団にフリーランスで勤め、教材のヴィデオを 作ったり、編集をしているのだが、教材の素材を録りに海外(途上国)に出向くことも多く「ついで にというか秘密の仕事として(笑)、空いている時間に(音も)録っている」のだそうだ。 しかし、すべてがフィールド・レコーディングで完結するわけではなく、友達のお母さんが 弾いているオルガンなど、風変わりな音楽演奏が収録されているうえ、「(NGOで)行くのは途上国が 多いんですが、銅鑼やマウス・ハープなどそこで買ってきた楽器も使ってます。珍しい楽器というの は家にたっくさんあるんですよ(笑)」といい奏法すらわからない楽器も多数あるようだ。 ちなみに彼は、この取材数日後にもタンザニアに向かった・・・。
そして彼は今、ライブ演奏可能な音楽も始めようとラップトップPCと楽器を使ったパフォーマンス を考えている。しかしその楽器は、「楽器を作る道具」を作ることから始まり完成した。「実は3月 ぐらいからスティールパンを作っているんです。まず丸いハンマーを作ることから始めて(笑)。よう やくかたちになって、しっかり音階がでるようになったんですけど、普通のスティールパンのように しては意味がないので、さまざまなスケール(音階)をミックスした、平均律や純正律とも違うものに したんです。『チューニングずれてるんじゃないの?』というような音も入れて(笑)」という。
ちなみに、彼には、おなじ曲を演奏しても2度とおなじ演奏にはならないという特性をもつ 音樂形態/ジェネレイティブ・ミュージックの代表的なプログラム「koan」(※ブライアン・イーノが このプログラムを使った『Generativ Music 1』を発表し話題となる)を使った、フロッピーの作品も ある。が実は最近、あまりkoanを使うことはないらしい。

話を『hypernatural』に戻すと、#1は、〈記憶〉、〈光〉、〈日本〜汎アジア的なもの〉を表現 したサウンド・コラージュというものだったと記憶する――「構造的にしたっかた」という手の込んだ パッケージ(黒箱)には、カメラ・オブスキャンを模す小さな穴が空き、穴から入った光の放射と 鳥の巣を重ねたイメージ画が描かれ、鳥の羽や、オリジナルのミニ画集までが入っていた。
「#2は、#1にちょっと引きずられていて〈透明なもの〉、というふうにしたつもりなんです」
・・・・・・透明?
「存在するが見えない、みたいな。例えば《Malaria》では、仕事で一緒に行ったスタッフが実際に マラリアにかかったんですが、現状としては見えるけど、それ自体は目で見えない。そこで体験した、 本当に真っ暗な、なにも見えないブシュの中で音だけが聞こえる。そういったものを扱ったつもり なんです。《Potential》とは”存在”、これは水だけの音なんですが、そのなかからキーを拾って いってメロディーが出るようにしてたり。あと”残像”だとか”風”だとか”極光”と僕は呼んでい るんですがオーロラとか。《Deep Sound Channel》というのは深海に音がすごくよく通る層があるら しいんです。なぜ〈hypernatural〉かというと、人間と自然を分けないようにしたいなと思って。 僕は、人間と自然の”共存”という関係はありえないと思うんです。人間が作ったものも自然なもの だと思うんです。絶対に人間は自然の”中”にいると思うんで、扱う音にしても、人間が携わった 音だから、携わらなかった音だからではなくて、そういう観点で同じもの、としてみていこうとして います」
そして、#3は「忘れることで新しい関係も築かれるはずで、”忘れる”や“無くす”は必ずしも 100%悲劇ではないでしょ。そこの面白さをやりたいなと思っています」とのことで、〈忘却〉にな るという。#2の〈透明なもの〉は、〈記憶〉と〈忘却〉の間でもあるのだ。

「これまでに行ったのは貧困地帯ばかりなんですけど、そこで目が覚めた部分があったんです。 都市に住んでいるとなかなか気付かなかったものが沢山あって、それがこのアルバムには反映されて いると思う。そこでの経験がなければこのようなことはやっていないと思うんです」



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