
雑誌記事「Amorphoneとヨーロッパツアー」:
Improvised Music from Japan IMJ-301, 2002
聴かなきゃ損 アモルフォンだよ 全員集合〜!
アモルフォン キラキラ光る 共鳴音
2002年の冬、演奏と絵画作品の展示発表をからめた「2002 Winter Tour」をユーゴスラビア、ドイツ、オランダ、東京で行なった。絵画は、近年試みている印画紙のみを使ったフォトバティック(Photobatik)、ライブのセットは、アモルフォン(Amorphone)+Max/Mspを中心としたエレクトロニクスだった。
アモルフォンとは、自分で半年かけて、ドラム缶から作り上げたオリジナル・チューニングのスチールパンのことで、amorphous(非結晶) + phone(音)からの造語。過去に発表したHypernaturalシリーズのCD(録音作品)の表現をライブ的に拡張することを目的として、このセットを構築した。東アジアの稲作文化と太陽信仰の光と影を、金属から発せられる複雑な倍音構造に見い出して以来、これに興味を持ち、度々、録音作品でも光の象徴として、ドラ、ベル等の音を使ってきたことから、この楽器にたどり着いた。スチールパンは、御存じの通り、光の放射を想わせる円形の楽器であり、その生い立ちや製造行程、独特な音色にいたるまで、どれをとってもユニークだ。しかし、実際はこのような論理的な展開のもとにこのセットが作られたわけではなく、極めて衝動的、直感的に製作された結果だ。また、Max/Mspのプログラムでは、伝統的なインド器楽のタンプラーのようなドローンの役割をMsp部分のリアルタイム・サンプリング・エンジンに担当させている。
音の幸 聴く人ありて 場所ありて
ケルンのレーベル、softl music[*1]は、Tom Steinle(tomlab[*2])とAndres Krauseによって、設立されたレーベルで、僕の2枚目のCDはそこからリリースされた。2人とも優れた耳の持ち主で、また人間的にも愛すべき人物だ。彼等とaufabwegen[*3]のTill Kniolaのコーディネートによって、ドイツのCuba[*4] (Muenster)、Schneiderei (Cologne)、オランダのExtrapool[*5] (Nijmegen)でのライブが行なわれた。その中でも1990年に設立されたExtrapoolは、特種技術を持つ世界でも稀な印刷工房、Knust(softlのジャケットはこの工房によるものである)や宿泊施設、イベントスペース、アートショップが2つのビルの中にまとめられており、13名いるスタッフにより、すばらしい活動をしている組織だ。音のイベントには、Staalplaat[*6]のFrans De Waardが関わっており、様々なアーティストがこの場所で独自の音を奏でてきた。このような施設がアーティストとリスナーを結び付け、文化的に新しい試みに挑戦する人間的な本能を三身一体的に育んでいる。アーティストの作品を語る時、そのコンセプトと作品の関係性が論じられたりするわけだが、作品成立に大きく寄与しているのは、実は、「人のつながり」であり、Extrapoolのような組織なくして、トータルな意味での文化興隆はありえないのだ。(みんな、ありがとう!)
目指す音 ドナウのごとく 悠々と
ヨーロッパでのもう一つの受入先は、ユーゴ第2の都市、ドナウ川沿いに位置するノヴィ・サド(Novi Sad)のイズバ(Izba)[*7]だった。イズバは、才能豊かなアーティストでもあるMileta & Svetozar Posticによって運営されている、ギャラリー、書店、カフェが1つになったスペースだ。今回は、コンセプチャル・アーティストの豊嶋康子とのパラレルな展示企画であり、ライブやワークショップは、市の援助のもとにノヴィ・サドとベオグラードでおこなわれた。日本人アーティストは、Ground ZeroとピッチカートVが有名だった・・。アモルフォンの音/形状自体とても珍しがられ、また曲目もバルカン・ブラスバンドのような赴きが多少あったせいか、興味をもった人々といろいろ話をすることができ、とても有意義だった。
パワーブックから出力されるモノトーンな音とは異なり、アモルフォンの音は、生で聞くと奇妙な倍音が多く含まれている(初期型のスチールパンのように無垢で、粗暴だ)。PAシステムを伴う音響作品は、音のテクスチャーが均一化する方向にあるが、僕がアモルフォンで目指す音楽は、より拡散的で、非結晶な音楽だ。固い論理の楯をも侵食し、真に直感的なものを目指している。
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